牽引免許(けん引免許)とは?取得する方法や費用・免許が必要ないケースも解説

牽引免許(けん引免許)とは、大型トレーラーやタンクローリーなど、自走しない荷台をけん引する車を運転するために必要な免許です。

ドライバーとして働いている人の中には、会社から牽引免許を取得するようにお願いされたという人や、キャリアアップや給料アップを目指して、牽引免許の取得を検討している人も少なくないのではないでしょうか。

この記事では、牽引免許の基礎知識から、牽引免許を取得する方法、取得にかかる費用など詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

牽引免許(けん引免許)とは

牽引免許は、牽引装置をもつ車両(大型自動車、中型自動車、準中型自動車、普通自動車、大型特殊自動車)が、牽引されるための装置を持つ車(車両総重量750kgを超える車両に限る)を牽引するために必要な免許です。

牽引免許で運転できる車両例は、トレーラーやタンクローリーなどが挙げられますが、運転席のある牽引する側をトラクター、牽引される被牽引車をトレーラーと呼びます。

車両総重量とは、被牽引車(トレーラー)の車両重量と最大積載量をあわせた合計で、車両総重量が750kgを超えると牽引免許が必要になりますが、750kg以下の車両を牽引する場合は牽引免許は必要ありません。

牽引免許は、運転する車両の免許と組み合わせて使用するため、例えば、大型トレーラーを運転するためには、牽引免許とあわせて大型自動車免許が必要になります。

牽引免許の種類

牽引免許には、以下のように3つの種類があります。

種類によって運転できる車両が異なるため、それぞれの違いを把握しておきましょう。

  • 第一種免許(牽引免許)
  • 牽引自動車第二種免許(牽引第二種免許)
  • 牽引小型トレーラー限定免許

第一種免許(牽引免許)

公道を走行できる運転免許を「第一種免許」といい、一般的に牽引免許といえばこの免許のことを指します。

3種類ある免許の中でも一番取得率が高く、大型トレーラーやタンクローリーのように、運転席と荷台がセットになった車を運転する時に必要な免許です。

牽引自動車第二種免許(牽引第二種免許)

「第二種免許」とは、タクシーや運転代行など客を乗せて運送するために必要な免許です。

牽引自動車第二種免許が必要な例としては、トラクターに客車をつなげたトレーラーバスのような営利目的の特殊な車両が挙げられますが、日本にはほとんどないため、牽引自動車第二種免許を取得する人は少ないです。

牽引小型トレーラー限定免許

牽引小型トレーラー限定免許は、車両総重量750kg超〜2t未満のキャンピングトレーラーや、ボートトレーラーなどの被牽引車に限り、牽引ができる免許のことです。

この免許は、第一種や第二種免許と違い、教習所に通って講習や試験を受けて取得することはできません。

牽引小型トレーラ限定免許を取得するには、運転免許試験場に事前に連絡をした上で、試験車両を持ち込む必要があります。

しかし、試験を受ける受験者は対象車両を運転できないため、牽引免許を保有している人に試験場まで運転してもらわないといけません。

そのような手間から、牽引小型トレーラー限定免許を取得する人は、第一種免許(牽引免許)と比較すると10分の1程度に留まります。

牽引免許が必要ないケース

牽引免許を取得していなくても車両を牽引できるケースがあります。

ここでは、牽引免許が必要ないケースについて説明します。

牽引免許が必要ないケースは、以下の通りです。

  • 車両総重量750kg以下の車両を牽引する場合

(牽引車と被牽引車、積載物の全長の合計が12m未満、高さ3.8m未満、全幅2.5m未満の場合に限る)

  • 故障車などをロープやクレーンなどで牽引する場合

(故障車を牽引する場合は750kg超えでも牽引免許が不要。ただし、故障車にはその車を運転できる免許を持つ人が乗車して、ハンドル操作をする必要がある)

車両総重量750kg以下で、牽引免許が不要な車の例としては、小型のキャンピングカーなどが挙げられます。

牽引免許の取得方法・費用目安

ここでは、牽引免許の取得方法と、取得にかかる費用について解説します。

牽引免許を取得する方法は、主に以下の2つです。

  • 自動車教習所に通う
  • 一発試験を受ける(運転免許試験場、運転免許センター)

牽引免許を取得できる条件

まず前提として、牽引免許を取得するには、大型自動車、中型自動車、準中型自動車、普通自動車、大型特殊免許、第二種免許のうち、いずれかを保有している必要があります。

牽引免許を取得するための条件は、以下の通りです。

  • 大型自動車、中型自動車、準中型自動車、普通自動車、大型特殊免許、第二種免許のうち、いずれかの免許を保有している
  • 満18歳以上
  • 視力が両眼で0.8以上、かつ、一眼でそれぞれ0.5以上(メガネやコンタクトレンズの使用は可)
  • 深視力検査を行い、3回検査した平均誤差が2cm以下
  • 赤、青、黄色を識別できる
  • 10mの距離で90dBの警音器の音が聞こえる(補聴器の使用は可)
  • 運転に支障を及ぼす恐れのある身体の障害がない

牽引免許を取得にかかる費用

牽引免許の取得にかかる費用は、教習所と一発試験で異なります。それぞれの費用目安は、以下の表の通りです。

取得方法費用目安
教習所に通う約12〜18万円
一発試験を受ける6,100円(東京都内参考)

教習所に通って牽引免許を取得する場合は、受講料の他に教習所を卒業した後に、運転免許試験場で適性試験を受けます。

その際の受験料は1,750円、免許証交付手数料が2,050円で、合計3,800円(東京都参考)です。

教習所によっても費用は異なるため、申し込みの際は料金を確認しましょう。

教習所で牽引免許を取得する流れ

教習所で牽引免許を取得する流れは、以下の通りです。

  1. 指定自動車教習所に入学する
  2. 適性検査、運転適性検査を受けて合格する
  3. 技能講習を受講する(12時間)
  4. 技能卒業検定を受けて合格する
  5. 運転免許試験場で適性試験を受けて合格する
  6. 牽引免許証が交付される

教習所に通って牽引免許を取得する場合の技能講習にかかる時間は12時間ですが、合宿の場合は最短6日間が目安となります。

教習所を卒業した後は、運転免許試験場で適性試験を受けますが、学科教習はありません。

一発試験で牽引免許を取得する流れ

一発試験で牽引免許を取得する流れは、以下の通りです。

  1. 運転免許試験場で適性試験を受けて合格する
  2. 技能試験を受けて合格する
  3. 牽引免許証が交付される

教習所に通う場合と比べると、一発試験の方が免許取得にかかる期間も短く、費用も安く抑えられます。

しかし、教習所とは違い免許取得するための技術や知識は自分で身につける必要があるため、難易度は高くなるでしょう。

牽引免許に関してよくある質問

ここでは、牽引免許の取得に関してよくある質問に回答します。

牽引を行う場合は、法定速度が変わる?

牽引車で公道を運転する時の法定速度は、他の車両と変わらない60km/hですが、ロープやクレーンを用いて故障車などを牽引する場合は、以下のように車両の重量によって異なるため注意しましょう。

牽引される自動車(被牽引車)牽引する自動車法定速度
車両総重量が2t以下車両総重量が、左記の自動車の3倍以上40km/h
上記に掲げる以外上記に掲げる以外30km/h
条件なし排気量125cc以下の普通自動二輪車や原動機付自転車25km/h

牽引免許の取得に使える給付金制度はある?

牽引免許の取得には「教育訓練給付金制度」を利用できる場合があります。

「教育訓練給付金制度」とは、再就職支援を目的とした制度で入学金と受講料を合わせた金額の40%(最大20万円)の給付が受けられる制度です。

この制度を受けるためには、以下のような条件があります。

  • 初回の場合:雇用保険の加入が1年以上
  • 2回目以降の場合:雇用保険の加入が3年以上
  • 在職中か離職から1年未満に申請すること

ただし、教習所によっては、この制度の利用ができないところもあるため、事前に確認するようにしましょう。

※参考:厚生労働省教育訓練給付金制度

牽引免許取得の難易度は?

牽引一種免許取得の難易度は、高くありません。

警察庁交通局運転免許課の調査によると、令和2〜3年の牽引第一種免許の合格率は81.6%です。

しかし、この合格者の約8割が教習所を卒業した人のため、一発試験で免許取得を目指す人の難易度は上がります。

また、牽引二種免許になると合格率は21%と難易度が高くなります。

※参考:警察庁交通局運転免許課|運転免許統計(令和3年版)

牽引免許を取得してドライバーとしてのキャリア・給料アップを目指そう!

牽引免許(けん引免許)は、トレーラーやタンクローダーなどを運転するために必要な免許で、車両総重量750kgを超える車を牽引する際に必要になります。

牽引免許を取得するには、大型自動車、中型自動車、準中型自動車、普通自動車、大型特殊免許、第二種免許のうち、いずれかの免許を保有している必要があるため、牽引免許と同時に大型自動車免許などを取得するケースも多いです。

牽引免許を取得していると幅広い車両を運転できるため、ドライバーとして働いている人はキャリアアップや給料アップが目指せます。

免許取得の難易度は低く、活用できる給付金制度もあるため、制度を上手く活用して牽引免許を取得してみてはいかがでしょうか。