“最高のバスサービス”を提供したい。そこに懸ける想いと取り組んできたこと。

  • 2025年1月16日
  • 2025年1月16日
  • ドラ魂

今回取材させていただいたのは、三倭(ミツワ)観光株式会社の代表取締役である小林さんです。これまでの取り組みや社内改善で実施したこと、“最高のバスサービス”に対する想いを伺いました。

三倭(ミツワ)観光株式会社
代表取締役/小林 佑次

埼玉県出身。慶應義塾大学経済学部を卒業後、新卒で株式会社リコーに入社。営業として約5年勤務したのち、三倭(ミツワ)観光株式会社へ。旅客自動車運送事業・旅行業をイチから学びつつ、役員として組織づくりを進め、2013年4月に代表取締役に就任。

全くのイチからこの業界へ。とにかく必死でした。

元々は株式会社リコーで営業をしていたので、旅客自動車運送事業や旅行業の領域は全くといっていいほど知識がありませんでした。業界のことも仕事のことも全部、自分で勉強しながら覚えていく日々。運行管理者や国内旅行業務取扱管理者、衛生管理者の資格も入社して1年以内に取りました。日中は仕事をして、夜や休日は勉強して…という感じでしたね。経営のことも外部の社長に相談したり、セミナーに参加したりしながら学んでいきました。

―想像するだけで大変そうです。

じつは、三倭観光は父が創業し、兄が他のグループ会社と兼務で経営していた会社なんです。未経験の社長親族が入社するということで、風当たりは当然強くなるし、当時の役職者にとっては面白くなかったと思います。だからこそ、自分がちゃんと力をつけていかなければならない。そのためにできることは全てやっていきました。

お客様・会社・社員に対してできること。様々な角度から、改善を重ねてきた。

―小林さんは、会社の組織づくりや改善にも取り組んでこられたとお伺いしました。

はい。当初は役員、現在は代表取締役としてですが、様々なことを改善してきました。ハード面で言うと、仕事を終えて戻ってきた運転手が少しでも早く帰れるように、車庫に自動洗車機を設置したり、2台同時に給油ができるよう給油スタンドを設置したり、夏場の車両整備などで汗が流せるようシャワー室も社屋に設置しました。2023年に社屋が新しくなったので設備もきれいです。

車両については、最新の安全装備を毎年導入しています。ふらつき警報、運転注意力監視モニターを装備している車も毎年増えています。こういった職場環境や設備は、社員のためにコツコツ貯めながら少しずつ整えてきました。

―ソフト面では何か改善されたことはありましたか?

待遇面の改善をしました。みんなで心地いい関係がつくれるように、会社の利益はしっかり社員に分配しています。令和5年度は給与や手当を4回改訂、令和6年度もすでに2回改訂をしました。手当については、距離に応じた手当や皆勤手当、無事故手当の増額、車両整備清掃手当の新設などですね。

物価が上がってきている今は、社員が生活に不安を感じないように、年2回の賞与でまとまった支給よりも、毎月の給与が手厚くなるように方針を変えました。とはいえ、賞与をなくすつもりはありません。堅実に経営し、新車を多めに導入できそうなときもありますが、無茶な投資もしていません。あくまで毎年の投資計画に沿って、利益はその都度分配するようにしています。

―業界が打撃を受けたコロナ禍はどのような状況でしたか?

1年目を除いてすべて黒字でした。補助金を申請して給与は満額で支給しつつ、新たにアルバイト業務もつくりました。例えば、グループ企業で動いていたトラック定期便の業務、トラックに自信がない社員に向けては倉庫の草むしりや除草シートを張る作業もありましたね。なんとか社員が働ける環境を、という想いでした。

徐々に遠足などの仕事が戻ってきたときは、みんなで仕事を分け合って担当していました。久々の運行から帰ってきた運転手はみんな、とても良い顔をしていましたよ。仕事があるのは当たりまえじゃない。仕事があるのはありがたいこと。本当にそう思います。

“サービス”であることを忘れない。

―多くの取り組み・改善をするなかで大切にしてきたことはありますか?

どの業界でも言えることですが、お客様に選ばれないことには事業は存続できません。「どうしたら選ばれるか」つまり「どういうサービスであるべきか」を考えるということです。バス事業で言うと、運行だけがサービスではなく、電話対応、見積作成のスピード、お客様とのやり取り…すべてがサービスです。そのすべてを「気持ちがいい」「また利用したい」と思ってもらえるように心がけています。「お客様の感動と喜びにつながる最高のバスサービスとは何か」を追求していくことで、お客様に対してはもちろん、会社や社員に対しても何をすべきかが見えてきます。先ほどお話しした様々な取り組みもまさにその一部です。

お客様や社員との「和」を尊重する。

―会社の雰囲気や人間関係についてはどう感じていますか?

この業界では1日でも早く入ったら先輩、と昔から言われていましたが、当社はそこまで厳しいタテ社会ではありません。ヨコのつながりを大事にして仲間と一緒に良い仕事をするという雰囲気があります。事務所には運転手用のデスクやパソコンがあるので、事務や内勤スタッフとも上手くコミュニケーションが取れる環境です。運行管理者はドライバー経験があるので、お互いを理解しながらみんなで協力できています。

仕事はやっぱり、自分の力だけではなく周りの支えがあってこそなんですよね。運転技術や知識は確かに大事。でもそれ以上に「和」を尊重することが大事。「協調性・協力性・個の能力」この3つが揃ってこそ、仕事も人間関係も上手くいきます。

―今後についてビジョンはありますか?

極端な拡大路線にいくつもりはありません。信頼できる仲間を集めて、質を上げていくことに注力したいと思っています。当社は最高ランクの「三ツ星優良バス事業者」に認定されています。引き続き、安全面についてはもちろんのこと、“最高のバスサービス”を提供し続けていくことで、当社を大事にしてくれるお客様にずっと選んでいただけるような会社でありたいです。運転手の待遇は今後もよくしていきますが、お金第一の経営にはしません。お客様との結びつきが強い経営を目指しています。

バス運転手は素晴らしい仕事だということ。根本的な楽しさを感じてほしい。

―小林さんから見た、バス運転手のやりがいとはなんでしょうか?

「大きいバスに乗れるのがかっこいい」というのも確かにそうですが、もっと根本的な部分も感じられると良いと思います。バス運転手の仕事は「便利なものをより便利に」「楽しいことをより楽しく」するお手伝いでもあるからです。例えば、スクールバスや送迎バスは便利で安全な日常のワンシーンとして。修学旅行では子供たちの楽しい思い出となるように。バス運転手の仕事は、お客様を目的地までお送りする以上の意味があると思います。

―最後に、この業界を目指す方へメッセージをお願いします。

昔は大型二種免許を取って大型バスに乗れたとしても、他の業界に比べて運輸業界は低く見られていた感覚がありますが、今は違います。運転手の母数がそもそも少なくなっているので、トラックもバスも、大きな車を運転できること自体が貴重です。

ニュースでは悪い部分だけが取り上げられてイメージが悪くなっていますが、実際はお客様の喜ぶ姿を一番近くで見られて感謝もいただける仕事です。運転手はよく話してくれます。「ありがとう」「楽しかった」と言ってもらえる。楽しんでいる姿を見られる。それが最高だと。素晴らしい仕事だということを感じてほしいです。

会社概要

  • 社名     三倭観光株式会社
  • 本社所在地  〒339-0073 
           埼玉県さいたま市岩槻区上野5-1-23 西町ビル2F
  • 設立     昭和60年4月
  • 代表者名   代表取締役 小林 佑次
  • WEBサイト  https://www.mitsuwa-kanko.co.jp/
  • 事業内容   バス事業、旅行事業、中古車販売事業、貨物運送事業、ネットショップ事業